"The Secrets of Consulting" (日本語訳「コンサルタントの秘密」) は 1985年に刊行された ジェラルド M. ワインバーグ (Gerald M. Weinberg) による本である。 名著として、コンサルティング業界ではよくとりあげられる。 著者のワインバーグはもともとIBMの技術者として働いた後、独立し、コンサルタント・教師・著作者となった。
おことわり: 内容が非常に濃い本で、大幅に端折っています。 「これは自分の解釈と違う」という部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください。
「コンサルタント」とは「他人の求めに応じて、他人に影響を与える仕事」である。 今日、多くの人がコンサルタント的な役割を負っている。 他人から手引きしてほしいと言われれば、あなたはコンサルタントだ。 しかし同時に、コンサルタントは「求めに応じて与えたアドバイスで、 相手から逆ギレされる」という不条理に悩まされている。 この本はそうした不条理に悩まされているすべての人々のためのものである。
コンサルタントとクライアント (より正確には、クライアント側の管理職) の間には、つねに微妙な競合関係が存在する:
クライアントは助けを求めるが、 自分に助けが必要だということを認めようとしない。 なぜならそれは彼ら自身の無力さを認めることになるからだ。 コンサルタントはこの問題につねに向き合わねばならない。
技術的な問題も、つきつめれば人の行為(あるいは行為の欠如)によるものだ。 そしてその原因は、つきつめれば想像力の欠如か、あるいは視野の欠落である。 したがってコンサルタントの仕事は、あえてクライアントとは別のやり方を 提案してみることである。
これはできるだけ時間を稼げという意味ではない。 そもそも問題を解決するのはコンサルタントではなく、クライアントなのである。
結局、コンサルタントができる最大のことは、 クライアントの面子をつぶさないようにこっそり改善し、 すべての手柄をクライアントに与えることである。
こんにち、人々は「最適化病 (optimitis)」にかかっている。 彼らはそれが合理的だと信じているためだが、 もし合理的なアプローチがうまくいけば人はコンサルタントなど雇わない。 コンサルタントに必要とされるのは、必ずしも合理的・論理的ではないが、 筋の正しそうなアプローチを試してみることである。 このさい有用なのが通称「オレンジジュース・テスト」である。
無能なホテル業者は「できません」または「絶対やります」と回答する。 有能なホテル業者は、トレードオフを提示してくる。
コンサルタントの多くは専門家である。 専門家というものはみな自分の専門で物事を見るため、木を見て森が見えない。 有能なコンサルタントは自分の専門外の問題も解決できる。 どうやるのか?
人体というものは複雑なシステムで、すべてを完璧に理解することは不可能である。 しかし、90%の病気は放っておいても勝手に治ってしまう。 これを応用する。
でも、もし治らなかったら?
多くの人は、この最後のルールをコンサルタントにも適用する。 コンサルタントは、自分の経歴がインチキっぽく見えないように渾身の努力をせねばならない。
このあたりから、各章は具体的な tipsの羅列になっていく。
コンサルタントにとって、 ものごとを観察する手段は多いほどよい。
コンサルタントを含む、多くの人々が見落としている (あるいは急ぎすぎて無視している) 情報がある。それは歴史である。
歴史を知っている人はもっとも重要な情報源である。 過去を批判するためではなく、理解するために歴史を学べ。
ときに「あるもの」ではなく「ないもの」が問題の本質を語っている場合がある。
これを繰り返した結果、小さな問題がいくつも残った状況になる。 こうした問題を発見するにはどうすればよいか?
これでも十分でない場合は、自分自身の頭のタガをはずしてみる。
ほとんどのトラブルは外的要因によるものではなく、自分の不注意によるものだ。 危険を避けるため、コンサルタントは自分の生活のあちこちに 警告システム (trigger) を仕掛けておく。
プログラマにとって、忘れることによるトラブルはつきものだ。 これを防ぐための有効な手立てを用意することができれば儲かる。
実際にコンサルタントができることはわずかである。 コンサルタントが成功するためには、少さな効果を増大させる必要がある。 コンサルタントは、 クライアントからは何もしていないように見えるのが一番よい。
組織には外部から人が入ってくる機会があり、 それがもとで組織に変化が生じる場合がある。 ときに新入社員やコンサルタントがその役割を果たす。 コンサルタントは外部の人間であるがゆえに、 システムがそれまで引っかかっていた (stuck) 部分を "unstuck" させることがある。
Over the years, I've discovered that what I do has no commonly accepted name. The best name would be jiggler, but who in his right mind would pay for the services of a jiggler? Sounds too much like juggler, or giggler, or even gigolo. So, after trying various alternatives, I still use the public name "consultant," although secretly I know I'm a jiggler. (My Tarot card is the Fool.)
長いあいだ、私は自分の役割に一般的な名前がないことに気づいていた。 たぶん一番それらしいのは「ガタガタ貧乏ゆすり屋 (jiggler)」だが、 どこのまともな人間が貧乏ゆすり屋に金など払うだろうか。 なんかジャグラーに似ているし、くすくす屋 (giggler) とか、 ジゴロのようにさえ聞こえる。仕方がないので、あれこれ試した結果、 いまだに私は「コンサルタント」と名乗っているが、内心ではひそかに自分は 貧乏ゆすり屋だと思っている(私のタロットカードは「道化」だ)。
これは次の記事を思い出させる: The Only Algorithm for Hard Problems: Shake and Pull Gently
「系の温度を上げて、ゆっくり冷やす」 - これは Discovery & Framing にも共通する手法のように思われる。
組織の変化は、なるべく変化させまいとしているまさにその部分から起こる。
たいていの危機は危機ではなく、ただ単に幻想が崩れただけである。
雄牛は、好きなところへ動かすことができる - それが行きたいと思うところであればどこでも。
ほとんどの人は最初からコンサルタントになるわけではなく、 何らかの専門職で働いていて、何かのきっかけで相談を受ける立場になる。 この場合、かつての職場が自分の最初のコンサルティングの客になる。
コンサルタントにとって、1/4以上の収入を単一のクライアントに依存するのは危険である。 そうするとクライアントに対して正直になれなくなり、コンサルティング能力の低下につながる。
では、客を満足させるにはどうするか?
価格と金はイコールではない。価格とはクライアントとの関係を表すのだ。 金のために仕事を受けてはならないし、もし客が自分の仕事を気に入らなければ、金をとってはならない。
信頼はコンサルタントにとってもっとも重要である。
最後にワインバーグは、知り合いの農家から教えてもらった農園に関するアドバイスを記している。