第7回 - 情報セキュリティと情報リテラシ

  1. 前回までのあらすじ
  2. 情報セキュリティ
  3. 情報リテラシ
  4. 本日のまとめ・小課題
  5. 情報リテラシ第二の予告

雑談

話題: 現在の東工大で不満なこと

連絡事項

授業学修アンケート提出のお願い

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情報リテラシ第二の履修申告について

情報リテラシ第二 1a (IL2) を まだ履修申告していない人は、追加申告が 7/18 まで 可能です。

注意: 1aクラスの人は、2Qでも 1aクラスを選んでください。

0. 前回までのあらすじ

演習 7-1. (前回の復習)
  1. IPアドレスとは何か?
  2. 次のうちもっとも多く通信料を使うサイトはどれか: Twitter、YouTube、Wikipedia、Instagram
  3. 「サーバ」と「クライアント」の違いを説明せよ。

1. 情報セキュリティとは

1.1. セーフティとセキュリティ

演習 7-2. セーフティかセキュリティか?
  1. 信号機
  2. 「はいってはいけません」の看板
  3. 金庫
  4. ダミー監視カメラ

おまけ: アホな錠前

安全対策・セキュリティ対策

おもに 3つのパターンがある:

  1. 予防 (抑制) … 事件・事故が起こる原因を減らす。
  2. 強化 (保護) … 対象を頑丈にする。
  3. 緩和 (封鎖) … 万が一、事件・事故が起きた後のダメージを少なくする。
予防 強化 緩和
  1. 火事の場合 …
    1. 予防 … 火をなるべく使わない。
    2. 強化 … 燃えにくい素材を使う。
    3. 緩和 … 消火器を用意する。避難訓練をする。
  2. 自動車事故 (運転者) の場合 …
    1. 予防 … なるべく車に乗らない。安全運転を心がける。
    2. 強化 … 頑丈なクルマに乗る。
    3. 緩和 … シートベルト・エアバッグ等の装備。自動車保険。
  3. 外出時の盗難の場合 …
    1. 予防 … 貴重品はなるべく持ち歩かない。
    2. 強化 … 出しにくい所に入れる。
    3. 緩和 … 現金を小分けにして複数箇所に入れておく。
演習 7-3. 対策の種類
  1. コロナウイルス感染症について、 予防強化緩和の手段を答えよ。
  2. パスワード漏洩について、 予防強化緩和の手段を答えよ。

1.2. 情報セキュリティとは

以下の 3つのものを守るのが情報セキュリティである。

  1. 秘匿性 (秘密を守れる) … 知られたくないことを知られたら ×。
  2. 正真性 (内容が正しい) … 勝手にデータを改竄・なりすまされたら ×。
  3. 可用性 (必要なときに使える) … いざ必要なときに動かなかったら ×。

セキュリティが破られるとき

  1. コンピュータが悪い場合:
  2. 人間が悪い場合:

1.3. ふつうの人にできる対策

  1. 「自分なんて誰からも狙われないだろう」とは思わないこと。
  2. PCはなるべく強化しておくこと。
  3. 何事にも冷静に対処すること。

1.4. 暗号を正しく使うのは大変

現在のインターネットでは、ほとんどのサイトに「鍵マーク」がついている。 これは、そのサーバとの通信 (パケット) が「安全である」ことを意味している。

暗号化あり (HTTPS) 暗号化なし (HTTP)

しかし「安全である」というのは、 ただ「暗号を使っている」だけではない。

演習 7-4. 暗号さえ使っていれば OK か?

あなたはネットショップで見たある商品を購入しようと思い、 そこに書いてある口座に代金をふりこんだ。 この通信は暗号化されているので、この口座番号は正しいはずである。 この論理の穴を指摘せよ。

悪者も暗号は使えるので、たとえば正当な相手のフリをして 自分と暗号を使って通信すれば、結局のところ情報は悪者の手に渡ってしまう。 (中間者攻撃)

暗号 自分 悪者 (中間者) 本当の相手

したがって、通信を本当に安全にするためには 2つのことが必要である:

  1. 暗号を使う。
  2. 確実に正しい相手と通信する。

しかし b. をどうやったら確信できるのか?

演習 7-5. どうやって信頼する?

ある日、母親の親戚を名乗る (会ったことがない) 人から電話がかかってきて 「荷物を送りたいので住所を教えてほしい」という連絡があった。 これが本当に親戚からの電話で、詐欺でないことを確認するにはどうすればよいか?

ブラウザにおける「鍵マーク」は、通信時に相手のサーバ名が 正しいかどうかを 認証局 (CA) と呼ばれる第三者機関に 確認してもらうことによって「安全」というお墨付を得ている。

これって本当に www.titech.ac.jp? うん 暗号 認証局 自分 www.titech.ac.jp

認証局は世界に100箇所以上あり、パソコンやスマートフォンの中には これらの機関を確認する仕組みが最初から内蔵されている。 (なので、パソコンや携帯を買った時点で、すでにこれらの認証局を信用したことになっている。)

しかし…

演習 7-6. サイト名だけで十分か?

以下のウェブサイトは、どの有名企業のもの (に見える) か答えよ:

  1. www.nissan.com (日産自動車対ニッサン・コンピューター事件)
  2. www.applesupport.com

結論をいえば、サーバ名がそれっぽくても、騙されることがありうる。 ブラウザが保証するのは「そのサーバ名と安全に通信できているか」 だけであって、その中身が本物かどうかについては、何も言っていないのである。

1.5. セキュリティ - まとめ

2. 情報リテラシ

2.1. 結局、情報リテラシとは何なのか?

2.2. 作られた真実

また、ネットの記事はあとから こっそり改竄されたり削除されたりするので注意。

2.3. マスコミは「中立」か?

実際には「完全に虚偽のニュース」は少ない。問題は、 極端に偏ったニュースが多いことである。 このようなニュースは人々の意見を特定の方向に誘導できる。

データも間違える

陰謀論

マスコミが信用できないからといって、ネットの言うことを全部信用すると…

1%の法則: ネットの「多数派」はじつは大して多数派ではない。 ネットを利用する人の 9割以上は「見るだけ」で発言していない。 ただし全体の 1%程度の「声の大きい人」が目立ってしまう。

同調圧力

多数派がつねに正しいわけではなく、人気者が偉いわけでもない。 しかし、そのように考える人々は大勢いる。

2.4. なぜ人は信じてしまうのか?

世の中には、完璧に白黒がつくような問題はほとんどない。 どのような問題にも複数の見方・考え方が存在する。 そのため、人々が求める「わかりやすい結論」は往々にして間違っていることが多い。

マスコミもしょせんは商売である

科学的な議論は凡庸であり、退屈だ。 マスコミが儲けるためには、人が読みたがる記事を書く必要がある (とくにネット時代のメディアは、クリック数が収入に直結する) :

重要だが毎日起こっていることは無視される: 食べ物、空気、日光、職業のリスク。 人間の「直感的な」リスク計算は間違っていることが多い。

情報は無尽蔵にあるが、人間の注意力は限られている。

インチキな議論 (詭弁) の例

演習 7-6. 扇情的な記事とは

次の新聞記事のうち、不安または怒りに訴えているものを挙げよ:

  1. 野球部員がランニング中に倒れ死亡、監督は救急車呼ばず
  2. ネットの中傷が原因でアイドルが自殺
  3. 北朝鮮が核兵器の開発を加速
  4. 千葉県で震度4

2.5. 企業は信頼できるのか?

企業は政治的に中立かもしれないが、企業には企業の思惑がある…

2.6. 結局、どうすればいいのか

The first principle is that you must not fool yourself, and you are the easiest person to fool.
(科学における第一の原則はまず自分自身を騙さないことだが、ところで自分というのはいちばん騙されやすい人間だ。)
-- Richard Feynmann

3. 本日のまとめ・小課題

小課題5. グラフに騙されないようにする (6月6日締切)
クラス共通課題3. 「情報倫理とセキュリティ」 (6月6日締切)

4. 情報リテラシ第二の予告

6月13日 (2週間後) より開始。

みなさんに提出してもらった、Wikipedia における真偽のあやしい情報

(一部簡略化しています)


Yusuke Shinyama