2019年度コンピュータサイエンス第一
授業に必要な前提知識

1. 本授業を楽しく受けるために

本授業を楽しく受けるためには、

プログラムを入力する。
プログラムを実行する。

この 2つをとにかく速く繰り返すことが重要である。そのためには

まともなタイピング能力
PCの扱いに関する基本的な理解
テキストエディタを使いこなせること

が必要不可欠である。

2. タイピング能力を鍛える

PCのキーボードを使ったタイピングは、学生生活・社会人生活において絶対に必要なスキルである。ここでいう「タイピング」とは、ただ単にキーを打つだけではなく、PC上におけるカーソルの移動やコピー・ペースト機能の活用も含まれる。

たとえば、以下の文章を (コピー・ペースト等の機能を活用して) 空白まで含めて正確にタイプするのに要する時間はどれくらいか?

Python is an interpreted, interactive, object-oriented
programming language that combines remarkable power with
very clear syntax. For an introduction to programming in
Python, see Python tutorial.

  Main website: https://www.python.org/
  Downloads: https://www.python.org/downloads/
  Python Software Foundation: https://www.python.org/psf/

練習欄:

所要時間のめやす:

60秒以下 … チョー速い。何もいうことなし。
60秒〜120秒 … 標準。
180秒以上 … 遅い。もう少し上達しないと、本授業は苦痛です。

3. PC上のファイル・フォルダに関する基礎知識

本授業 (および、その他 PC を使うすべての授業) では、 PC システムの使い方に関する基礎知識が必要である。とくに、ファイルとフォルダの扱いに関する理解は必須である。

超基本的な Mac の使い方

Mac のアプリは「メニューバー」で識別する。
ウィンドウが開いていなくても、アプリは開いていることがある。
ファイルやフォルダを見るには、"Finder" を使う。
Command (⌘) キーを多用する。

3.1. ファイルについて

コンピュータ上の情報 (データ) は、すべて「0」と「1」の組み合わせで表される:

数値
文字(列) / テキスト
画像・音声・動画
その他 (日付や金額など)

PC上では、データはすべてファイル (file) に保存される。

各ファイルには、ファイル名と拡張子がついている。例: myfile.txt

ファイルの中身 … 0 と 1 の羅列。

0と1をどのように解釈するかがわからないと、正しく表示できない。

ファイルの形式は拡張子によって表される:

ファイル形式	拡張子
テキストファイル	`.txt`
HTMLファイル	`.html` または `.htm`
JPEG画像ファイル	`.jpeg` または `.jpg`
音声ファイル	`.mp3` など
動画ファイル	`.mp4`, `.mov` など
Pythonプログラム	`.py`

ファイル拡張子を表示させるには

Macでは (Windowsでも)、ファイルの拡張子はふだんは表示されない設定になっている。これを変更するには、以下のようにする:

Finderをクリックし、メニューから「環境設定...」を選ぶ。
「詳細」タブをクリックし、「すべてのファイル名拡張子を表示」にチェックを入れる。

インターネット上の以下のサイトから、「テキスト形式」のファイルと、「画像形式」のファイルをそれぞれ 1つずつダウンロードせよ。
- Project Gutenberg
- reddit
ダウロードしたファイルの拡張子を確認せよ。
各ファイルに対して「情報を見る」を実行せよ。
ひとつのファイルには、その内容の他にどのような情報が付随しているか?

3.2. フォルダとは何か

基本的な問題

ファイルが多すぎる!
現在のパソコンでは、扱うファイルの数は数万〜数百万にのぼる。
フォルダ = ファイルを分類するための容れ物。ひとつのフォルダの中に、ファイルまたはフォルダが入る。
同一フォルダ内に、同じ名前のファイルまたはフォルダが存在してはならない。

3.3. パス名とは

同じファイル名が異なるフォルダに存在しうる。
ファイル名だけでは「どこのファイルか」を特定できない。
ファイルまたはフォルダの位置をパス名 (path name) であらわす:
- Macでは:
  /フォルダ名1/フォルダ名2/…/ファイル名
- Windowsでは:
  C:\フォルダ名1\フォルダ名2\…\ファイル名

フォルダ X のパス名を答えよ。
ファイル H のパス名を答えよ。
ファイル C のパス名を 2つ答えよ。

自分のホームフォルダを開き、パス名を確認せよ。
デスクトップもフォルダである。パス名を確認せよ。
先ほどダウンロードしたファイルがどこにあるか確認し、そのパス名を書け。
Macintosh HD の中の「ライブラリ」フォルダを探索し、その中にあるJPEG画像ファイル (拡張子 .jpg) を発見せよ。そのパス名を書け。

3.4. 「ターミナル」とは何か?

Finder のメニューから「表示」 → 「ユーティリティ」を選び、「ターミナル」のアイコンを開く。
基本的な機能:
1. コマンドを入力して Enter を押す。
2. そのコマンドを実行して結果をテキストで表示する。
3. → 1. に戻る。
Windowsでは似たようなものに「コマンドプロンプト」がある。
コマンドには、実行するアプリのパス名を入力する。

ターミナルで文字を入力するときの注意

2種類の英字に注意。
- 全角: Ｇｏｄｚｉｌｌａ．
- 半角: Godzilla.
コマンドは必ず半角 (英数字モード) で入力すること!
じつは世界には似たような文字が一杯ある。
AＡΑАĄ

文字コード:

まず、ブラウザ (Safari) を終了する。
ターミナルを開き、以下のコマンドを半角で入力せよ:
- /Applications/Safari.app/Contents/MacOS/Safari
- /Applications/Thunderbird.app/Contents/MacOS/thunderbird
以下のコマンドを実行し、出力を観察せよ:
- date
- cal 2019
- banner abc
- banner -w40 abc

ターミナルの便利な機能

スクロール機能
中止機能: 時間のかかるコマンドの実行を途中で中断する場合は Control + C を押す。
履歴機能: 以前に入力したコマンドに ↑ と ↓ キーで戻れる。

補完機能:

→ /App Tab
→ /Applications/Saf Tab
→ /Applications/Safari.app/Co Tab
→ /Applications/Safari.app/Contents/Ma Tab
...

補完機能を使って、以下のコマンドを20回以下のキー入力で入力せよ。
/Applications/Safari.app/Contents/MacOS/Safari
以下のコマンドを実行し、出力を観察せよ:
(似たコマンドの入力には履歴機能を使うこと)
1. ```
find ~ -type f -mtime 7
```
2. ```
find /Library -name '*.jpg' -size +100k
```
3. ```
find /Library -name '*.jpg' -size +100k | sort -r
```
以下のコマンドを入力せよ:
1. ```
ls /Applications
```
2. ```
ls /Users/自分の学籍番号/_mac/Desktop
```
ls コマンドを使うと、パソコンの中のフォルダの内容を一覧表示できる:
```
ls パス名
```
ls -l コマンドを使うと、各ファイルの情報がさらに詳細表示される:
```
ls -l パス名
```

3.5. カレントディレクトリとは?

パス名は、いくらでも長くなりうる!
/Applications/Safari.app/Contents/MacOS/...
いちいちパス名を入力するのは面倒なので、簡単にできないか?
→ いま注目しているフォルダという考えを導入する。

以下のコマンドを順に実行し、何が起きたのか観察せよ:
1. ```
pwd
```
2. ```
ls
```
3. ```
cd /Applications
```
4. ```
pwd
```
5. ```
ls
```

現在の「注目しているフォルダ」のことを「カレント (current) ディレクトリ」と呼ぶ。
- pwd _{(Print Working Directory)} コマンド:
  カレントディレクトリのパス名を表示する。
- cd _{(Change Directory)} コマンド:
  カレントディレクトリを指定したパス名に変更できる。
- ls コマンド:
  パス名を指定せずに実行すると、カレントディレクトリのファイル一覧を表示する。

自分のデスクトップ (フォルダ) のパス名を確認せよ。
cd コマンドを使って、注目フォルダを自分のデスクトップフォルダに変更せよ。
CotEditor を使って、デスクトップ上にテキストファイルを作成せよ。
ls コマンドを使って、いま作成したファイル名が現れていることを確認せよ。
補完機能を使って、8回以下のキー操作でカレントディレクトリを /Applications に変更せよ。

3.6. 相対パス名と絶対パス名

カレントディレクトリと「相対パス名」を使うことで、パス名をより簡単に表現できる。
相対パス名: カレントディレクトリからみたパス名。
絶対パス名: ディスクの先頭からみたパス名。

相対パス名の表し方

相対パス名では、カレントディレクトリの位置を「. (ドット)」で表す: ./X, ./K など
フォルダ X の位置…
- 絶対パス名: /A/E/X
- 相対パス名: ./X
さらに、相対パス名では、ひとつ「上の」フォルダを「..」で表せる。
相対パス名の表現能力は、絶対パス名と同じである。つまり、ファイルシステム中のどんな場所も相対パス名によって表せる。
../../../../../../../Application = /Application

カレントディレクトリが E のとき…
1. フォルダ A への相対パス名は?
2. ファイル H への相対パス名は?
3. ファイル K への相対パス名は? (2つある)

ターミナルを開き、cd コマンドを入力して自分のホームフォルダに移動せよ。
デスクトップに新規フォルダを作り、その中に cd コマンドを利用してカレントディレクトリを変更せよ。
相対パス名のみを使って、そこから /Application フォルダに移動せよ。何回 cd コマンドを実行したか?
その位置から、ls コマンドに相対パス名を与え、自分のホームフォルダの一覧を表示せよ。

実際のファイル・フォルダは何でできているのか?

コンピュータ上の記憶装置 (ディスク) はつねに一定容量であり、一定個数の「0」または「1」が書き込まれている。これらの個数は変化しないため、実際には「空き容量」などというものは存在しない。また「フォルダ」という実体も存在せず、ファイルの「削除」などというものもありえない。これらは、すべてソフトウェアによる「見せかけ」である。

3.7. ターミナルで使うと便利なコマンド

(以下の例における $ は実際に入力する文字ではなく、ターミナルに毎回表示されるプロンプト ("pcm4649:~euske$" など) を表す。

```
$ open パス名 _{(絶対または相対)}
```
指定したパス名のフォルダをFinderで開く。
```
$ mv 旧パス名 新パス名
```
ファイルの名前を変更する。
```
$ cp 元パス名 新パス名
```
ファイルを別名でコピーする。
```
$ rm パス名
```
ファイルを削除する。 (ゴミ箱と違い、一瞬で削除されるので注意!)
```
$ cot パス名
```
テキストファイルを CotEditor で開く。
```
$ cot -n パス名
```
新規テキストファイルを CotEditor で作成する。

cd でデスクトップに移動し「open .」と入力せよ。何が起こるか?
cot でデスクトップに適当なテキストファイルを作成し、 mv コマンドを使ってそのファイル名を適当に変更せよ。
cpコマンドを使って、そのファイルを新しい名前でコピーせよ。
rmコマンドを使って、そのファイルを削除せよ。
(注意: 各コマンドは、成功したときには何も表示しない)

4. テキストエディタとは?

テキスト形式のファイル (.txt) の編集だけをするアプリ。 (だから text editor) 実際には、拡張子が.txt以外の「テキスト形式」も編集できる:
- HTML形式: .htm (.html)
- CSV形式: .csv
- TeX形式: .tex
- ...
- Pythonプログラム: .py
文字の装飾とかできない。
プログラム等を書くのに使われる。
本授業では CotEditor を使う。

この授業スライドのページ (HTMLファイル) をブラウザで開き、ファイルとして保存せよ。
保存したファイルが置かれている位置 (パス名) を答えよ。
HTMLファイルを CotEditor で開き、中に隠されている合言葉を発見せよ。

4.1. キーボード・ショートカットの使用

多くのテキストエディタは、キーボードだけで必要な操作がおこなえるようになっている。文字を選択したりコピー・ペーストするときに、マウスとメニューを使って行っていると非常にのろい。基本的なキーボードによる操作を覚えるようにしよう。

機能	Mac	Windows
入力位置 (カーソル) の移動	`←` / `↑` / `→` / `↓`
行頭/行末に移動	`Command` + `←` / `→`	`Home` / `End`
文字の選択	`Shift` を押しながら `←` / `↑` / `→` / `↓`
選択した文字の削除	`Delete`	`Backspace`
インデント (字下げ)	`Tab`
切り取り	`Command` + `X`	`Control` + `X`
コピー	`Command` + `C`	`Control` + `C`
ペースト	`Command` + `V`	`Control` + `V`
ひとつ戻す (Undo)	`Command` + `Z`	`Control` + `Z`
すべての文字を選択	`Command` + `A`	`Control` + `A`
選択した文字の置き換え	文字を選択したまま新しい文字を入力する

参考

CotEditor によるインデント幅の変更

CotEditor では、Tab キーを押すと行が一定幅インデント (字下げ) される。これは通常「タブ文字」が挿入されるが、 Python を使う場合はこれをスペース4個に設定する。メニューから「環境設定...」を開き、「編集」の欄で タブをスペースに自動的に展開 をチェックせよ。こうすると Tab キーを押すことで半角スペース4個が挿入される。

2019年度 コンピュータサイエンス第一 授業に必要な前提知識